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 波紋

 今季はあまり暑くなく、涼夏となった。

 最近は多忙を極めていた。

 ライブ、レコーディングなどやることは無数にありDayBreakのメンバーはプライベートもままならない状態であった。

 無所属のバンドとしては異例といえる人気を獲得したのだ、当然の結果だった。

 

 「響、こっちこっち」

 今日は2週間ぶりのオフだ。

 司と健太、徹もそれぞれの休日を過ごしているだろう。

 前もってこの休日をおしえておいたため音楽生の愛子は休校したらしい。

 俺のスケジュールで愛子を振り回していいのかわからないけど… 会いたいという気持ちが素直にあったので今こうして久々のデートを楽しんでいる。

 「いま行くよ」

 「ほら、早く」

 道の先で彼女は大きく手を振っている。

 お嬢様だからか、いまいち金銭感覚の欠けた愛子の買い物は大胆で 長く、帰りの荷物が膨大になる。

 いつもならなるべく付き合いたくはないが最近会えなかった 埋め合わせのつもりで買い物に誘った。

 街中あちらこちらの店を回り…

 案の定、この調子だ。

 「これ、かわいいねぇ」

 「そうだね」

 その指の先にしめされたぬいぐるみのことか?いや多分、その段に あるぬいぐるみ全てのことだろう。

 「あ、あれもいい」

 「そうだね」

 お気に入りのキャラクターデザインの灰皿?おまえは煙草吸わないだろが。

 「あれも買いたいナ」

 「そうだね」

 檜のテーブル?誰が持って帰るんだ?いや考えるのはよそう、とてつもなく嫌な予感がする。

 そんな調子で彼女はかれこれ4時間ほど買い物を楽しんだ。

 終始笑顔の愛子を見ているとこんな休日も悪くないと心から思える。




 今日、最悪な出来事が起こることなど…この時はまだ、想像もしていなかった。


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