頭はひどく冷めていた。

 怒りもわいてこない。

 ただ淡々と言葉が口をついてでた。

 「合鍵を置いて、帰ってくれ」

 「―――――っ!」

 由美の瞳に怒りが浮ぶ。

 こいつに、ルックスと身体以外にいい所などあるのだろうか?

 彼氏は不特定多数いるのだろう…。

 男がいない時期なんてないんだろうな、きっと。

 ステイタスか何かと思っているのか。

 「コンビニに行ってくる。その間に合鍵を置いて帰れ」

 全裸の由美を部屋に残し再び家を出た。



 由美の心は怒りでどす黒く歪んでいた。

 なぜ?

 行き場のない怒りを探すかのように床に落ちたシーツを踏みつけた。

 その時、「―――――」携帯の着信音が部屋に響いた。

 由美の携帯ではない。

 響が置き忘れていった携帯。

 ディスプレイには「愛子」と表示されていた。



★☆アイコ☆★


 「…はい」

 え?!

 響の携帯に出たのは由美だった。

 「由美…なんで?」

 「いま響、シャワー浴びてるから…後で掛け直すよう伝えとくわね…」

 そう言い残し切られた。

 由美の声は少し息を荒げていた、まるでコトの後のように…。


次ページへ