メンバーの中では俺が一番大人しいと思う。
DayBreakに入ったきっかけはドラムを募集していると聞いたから。
天性の歌唱力と磨き上げられたメロディーセンスを併せ持つ響。
統率力に長け、バンドの頭である徹。
タイトにリズムを刻み、時に高音部を駆け抜けるベースラインを紡ぐ司。
彼らと夢が見たくなったんだ。
誰も失いたくない。
バンドとしても。
人間としても。
思えば病院で盗み聞きしたあの時すぐにどうにかするべきだったんだ
俺は、いや俺と徹はいつしか馴れてしまっていたんだ。
きっと響は大丈夫と…。
さっきの司の態度で目がさめた…
そう、響は非常に危険な状態をずっと継続しているんだ。
何があっても不思議じゃない。
完璧な響が遅刻?
ありえない…きっと何かあったんだ…
響の宅へ向かう司の車の中で健太は自分を責め続けた…
★★ツカサ☆★
ベース、市江司
健太と徹の様子がおかしいのには薄々感づいてはいた。
しかし、まさかその内容が響の生命にかかわる問題だなんて気づかなかった。
なぜ気づかなかった!
ナゼ気づいてやれなかった?!
響はずっと危険信号を俺たちに向かって出していたんじゃないのか?
くっそ!くそ!くそ!くそ!くそ!
今、助けてやる響!
すぐ行ってやるからな!
絶対に死ぬな!
響と正反対の性格で他のメンバーと比べるとなかなか上手く折り合わなかった司だが…彼は誰よりも嘆いていた。
初めて仲間の死の可能性を知り…しかも、完璧に物事をこなす響が遅刻している―――司の頭の中では最悪の状況しか浮ばなかった。
☆☆トオル★☆
徹は愛子の家に向かって車を飛ばしていた。
今日は世間は休日、音楽生の愛子は家にいるはず…
愛子は携帯を変えたらしい。
メモリーに登録してあった番号は廃棄されていた。
響をバンドに誘ったのは俺だった。
偶然…なぜ響を誘ったのか…あの頃はまだ高校入りたてで…理由は覚えていない。
高校でのあいつはなかなか友達の出来ない奴だった。
すぐキレる。
遠まきにされるには充分な理由。
でもなんだか不器用なあいつを俺は好きだった。
愛子と付き合い始めたときも俺にだけは直接おしえてくれた。
そんな響を俺は見殺しにする気なのか?
今のうちに手を打たなければホントにあいつは死んでしまうかもしれない…
とりあえず今できることから始める!
愛子。
なぜかあいつが響の身体を一時的に回復させたんだ。
あいつに掛け合って…せめて一度でも響に会ってもらう。
その後、響の逆鱗に触れても構わない…
響が死ぬよりは響に嫌われた方がよっぽどいい!