メンバーでギターの徹(トオル)の紹介で高校のクラスメートだった愛子が外部アーティストとして クリエイティヴに参加する事になった。
曲は響、詞は愛子。
文語力のない響は説得力のある詞を紡ぐ愛子のクリエイティヴ加入に喜び、 愛子もメロディーセンスの高い響の曲に詞が載せれることを喜んだ。
6月――もう1週間全く睡眠をとっていない。
これも症状の1つなのだろうか…俺はこの状況に危機感を感じない。
今では薬に頼らなければ食物の消化、供給、排泄もままならない状態なのに…。
「響くん、響くん!」
呼ばれていたらしい。苦笑いと一緒に返事を返した。
「んっ?わるい、何だった?」
「しっかりしてよ。次のシングル候補でしょ?この曲」
いかにも「仕方ないなぁ」
という口調で笑いながら言われた。
徹の話しだと高校では相当モテたらしい。
当たり前か。
申し分ない容姿。
お嬢様らしからぬ気取らない立ち振る舞いとその性格でモテないはずがない。
片や俺は来る者拒まず去る者追わずで適当な恋愛に身を投じてきた。
我ながら自分本意な奴だと思う。
徹いはく、俺は身体目当ての甲斐性なしらしい。
確かに否定できないが…。
☆★ヒビキ★☆
喫茶店、テーブルを挟んで向かいの席で、紅茶を啜りながらメロディー譜に詞を
つけている愛子をよそに俺はなんだかそんなことをぼんやり考えていた。
佐奈田愛子。