そう言って仮歌詞を載せたメロディー譜を彼の手に返した。
「サンキュー。まだ時間あるし、せっかくだからもう少しお喋りしようか?」
えっ?
いつもならありえない彼のお誘い。
真っ白になりかけてる頭の中を放っておいて勝手に口が開いた。
「うん!」
いつも無感動に淡々と喋る響くん。
笑ってくれるんだけど…なんだかその微笑みに影が挿すのを感じる。
その憂いを私が埋めたい…。
渡した仮歌詞に目を通しながら響くんが切り出した話しは予想もしていないような事柄だった。
「そいえば、愛子は彼氏作らねぇの?留学した元彼以来誰とも付き合ってないだろ?」
・・・答えにくい。
っていうかそこは心の準備が出来てないから痛い。
私の心の中の悲鳴をよそに響くんは言葉を続けた。
「愛子モテるんだし、なんで作らないんだ?それとも好きな奴でもいるの?」
なんだか若干楽しげね、言ってる貴方が好きなんですけど…。
こんな状況で何も言えるはずがなく、私は俯いて只沈黙で返した。
「なんなら協力するよ?誰が好きなんだ?」
―――悪戯に笑う目の前の貴方が大好きです、って言えるかぁぁ。
「ほら言ってみろよ。応援するからサ」
頬杖ついて笑いかける彼に私は―――覚悟を決めて呟いた。
「…響くん」