「俺、母親いねぇんだわ。父親も…いるのかいないのかよくわからないような感じ」
とても悲しそうに…泣いたように響は笑っていた。
私は…、私は謝っていた。
そうすることで更に深く彼を傷つけるかもしれない、そうわかっていても…謝るほかなす術など無かった。 響には…両親はいないのだろうか?
いったいいつから彼は独りなのだろう?
考えると…まるで気分が悪くなっていくようだった。
そんな私に気遣ってか、彼は笑いながらこう言った。
「いまデザートもって来てやるよ」
響が台所へデザート取りに、席を立ち背を向けた瞬間――――私は泣き出した。
今まで彼の立ち振る舞いで何も感じなかったわけではない。
憂いがあるのは知っていた。
でもまさか独りで生きているとは思えなかったんだ。
施設にいるのとはわけが違う。
誰にも助けてもらえず生きていくこと。
簡単に出来る事じゃない。
一体…いつから響は独りだったんだろう?
――――私は気づいてあげれなかった。
そう思った瞬間、涙が止まらなくなっていた。
「あ、アイコ?」
響がデザートを片手に戻ってきた。
涙が止まらないバカな私をみて、優しい彼はどうしていいかわからないようだった。
「ごめんなさい……ご、ごめんなさい…」