★☆アイコ☆★


 「俺、母親いねぇんだわ。父親も…いるのかいないのかよくわからないような感じ」

 とても悲しそうに…泣いたように響は笑っていた。

 私は…、私は謝っていた。

 そうすることで更に深く彼を傷つけるかもしれない、そうわかっていても…謝るほかなす術など無かった。  響には…両親はいないのだろうか?

 いったいいつから彼は独りなのだろう?

 考えると…まるで気分が悪くなっていくようだった。

 そんな私に気遣ってか、彼は笑いながらこう言った。

 「いまデザートもって来てやるよ」

 響が台所へデザート取りに、席を立ち背を向けた瞬間――――私は泣き出した。



 今まで彼の立ち振る舞いで何も感じなかったわけではない。

 憂いがあるのは知っていた。

 でもまさか独りで生きているとは思えなかったんだ。

 施設にいるのとはわけが違う。

 誰にも助けてもらえず生きていくこと。

 簡単に出来る事じゃない。

 一体…いつから響は独りだったんだろう?



 ――――私は気づいてあげれなかった。



 そう思った瞬間、涙が止まらなくなっていた。

 「あ、アイコ?」

 響がデザートを片手に戻ってきた。

 涙が止まらないバカな私をみて、優しい彼はどうしていいかわからないようだった。

 「ごめんなさい……ご、ごめんなさい…」


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